「見えない危険」身近な水に潜むベンゼンって何?

「安全な水」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?日本の水道水は世界的に見ても安全と言われていますが、実は様々な化学物質が微量ながら含まれています。その中の一つが「ベンゼン」という物質です。 ベンゼンは無色の液体で、特徴的な芳香性があります(甘く独特な香りと言われています)。スマホのケースやスニーカーの素材にも使われるプラスチックの原料[1]として、私たちの身の回りの製品に関わっています。六角形の環状構造を持つこの化学物質(C₆H₆)は、石油や石炭から作られる有機化合物です。でも注意が必要なのは、このベンゼンが発がん性物質として国際的に認められていることなのです[2]。

水道水にベンゼンが混入する「意外な経路」とは?

「でも、どうやってベンゼンが水道水に入り込むの?」と思いますよね。工場や化学プラントの近くでは、製造過程での漏れや不適切な廃棄物処理によって水源が汚染されることがあります。また、意外かもしれませんが、古くなった水道管からベンゼンが溶け出すケースもあるのです。さらに、ガソリンスタンドの地下タンクから漏れ出したガソリンが地下水に混じり、それが水道水の源になることもあります[3]。 私たちの生活に欠かせない車や工場の活動が、間接的に水の汚染につながっているという皮肉な現実があるのです。

「まさか自分が?」ベンゼン摂取による健康リスクの真実

ベンゼンを大量に摂取すると、めまいや頭痛などの症状が現れることがありますが、みなさんにとって気になるのは長期的な影響ではないでしょうか。少量でも長い期間にわたって摂取し続けると、血液細胞の減少や免疫力の低下、最悪の場合は白血病などの血液のがんを引き起こす可能性があるとされています。これは急に症状が出るわけではなく、何年もかけて少しずつ体に影響を及ぼすかもしれないというところが怖いポイントです。そのため、WHO(世界保健機関)は飲料水中のベンゼン濃度を0.01mg/L以下とするガイドラインを設定し[4]、日本の水道水質基準もこれに合わせています。理科の実験で使う「ppm」という単位で言うと、0.01ppmという極めて微量な値です。

「自分でできる!」簡単ベンゼン対策で安全な水を手に入れよう

「じゃあ、どうすれば安全な水が飲めるの?」という疑問に答えましょう。市販の活性炭フィルター付き浄水器を使うことで、ベンゼンの多くを除去できます。浄水器を選ぶときは、除去項目に「ベンゼン」と書かれているかチェックしてみましょう。また、朝一番の水道水は使わず、数十秒間水を流してから使うという簡単な習慣も効果的です。一晩中水道管に滞留していた水には、より多くの化学物質が溶け出している可能性があるからです。さらに、水を沸騰させることでもベンゼンの一部は蒸発します。お茶やコーヒーを入れる前に、やかんでしっかり沸騰させることも良い方法です。こうした簡単な対策を日常に取り入れることで、健康リスクを減らすことができます。

「未来のために」日本の水質管理の現状と私たちにできること

日本の水道水は世界的に見ても安全性が高いものの、課題は残されています。広島市水道局の公式情報によれば、ベンゼンは「工場から漏れたものが地下に浸透し、地下水を汚染することがある」とされています。また、実際に「ガソリンスタンドの地下タンクから漏れたガソリン中のベンゼンが地下の水道管から浸透して混入した」事例も報告されており、水道インフラの経年劣化と相まって水質管理の難しさを示しています。

国や地方自治体は定期的な水質検査を通じて基準値(0.01mg/L以下)を満たすよう監視していますが、消費者側でも朝一番の水を十分に流すなどの対策をし、気になる方は活性炭フィルター付き浄水器の使用を検討してみてはいかがでしょうか。私たち一人ひとりが水源環境に配慮した生活習慣を身につけることで、限りある水資源の安全性を守ることができます。水質保全は行政だけでなく、市民の協力があって初めて成り立つ取り組みなのです。

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参考文献