愛するペットの健康を支える「水選び」の新常識

愛犬や愛猫の健康を考えるとき、フードや運動には気を配っても「水」については意外と見落としがちではないでしょうか。実は、犬や猫の体の 約60〜70% は水分で構成されています。水分は体温調節、消化、老廃物の排出など、生命維持に欠かせない役割を担っています。毎日器に注いでいる水こそが、愛するペットの健康を支える重要な要素であることを改めて考えてみましょう。

ペットの水分摂取量と健康への影響

犬・猫の理想的な飲水量は 体重1 kgあたり 40〜60 mL/日 とされています。具体的には体重5 kgで 200〜300 mL、10 kgで 400〜600 mL が目安です。ただし年齢や活動量、気温・湿度によって変動します。

さらに水分不足が続くと、以下のような疾患リスクが高まります。

  1. 腎臓病 – 老廃物の排出が困難になり、腎機能が低下します
  2. 尿路結石 – 尿が濃縮されることで結晶が形成されやすくなります
  3. 膀胱炎 – 細菌の繁殖を抑える尿の流れが減少し、感染リスクが高まります
  4. 歯周病 – 口内の清潔が保たれず、細菌が繁殖しやすくなります
  5. 便秘 – 腸内の水分不足により便が硬くなり、排便困難を引き起こす可能性があります

最適な水の種類と水道水の安全性

水道水には塩素が含まれているため、ペットに水道水を与えることに不安を感じる方も多いのではないでしょうか?実はペットに与える水として最も推奨されるのは水道水なのです。

日本の水道水は蛇口で 残留塩素 1 mg/L 以下 になるよう管理されており、WHO が示す健康上影響がないとされる上限 5 mg/L を大きく下回っています。さらに法令では「遊離残留塩素 0.1 mg/L 以上」を維持するよう定められており、安全性は世界でもトップクラスです。

日本の水道水は大半が 軟水(硬度60 mg/L 未満) で、カルシウム・マグネシウムなど硬度成分が少ないため、尿路結石のリスクを高めにくい点でもペット向きです。市販のミネラルウォーターを与える場合は、硬度50 mg/L 以下 の軟水またはペット用に調整された製品を選びましょう。

浄水器の活用と水温・衛生管理のポイント

水道水が安全であるとはいえ、においに敏感で飲んでくれない場合や、より安心できる水を提供したい場合には浄水器の活用が効果的です。水道水の不純物だけでなく、カルキ臭やカビ臭さなども除去することができます。

また、温度管理も重要な要素です。ペットにあげる水の温度は常温(15℃~25℃) が良いと言われています。

さらに衛生管理も気を付けるべきポイントです。浄水された水は塩素が除去されているため、雑菌が繁殖しやすくなっています。そのため、浄水された水を与える場合は長時間放置しないようにし、こまめに水を取り替えるようにしましょう。

健康的な水分補給のための実践的アドバイス

ペットの健康を支える水分補給において、以下のポイントを実践することが大切です。

  1. 水の選択:日本の水道水は基本的に安全で、経済的にも最適な選択です。浄水器を使用することで、においや味の対策が可能です。
  2. 適切な管理:常温(15~25℃)で新鮮な水を提供し、1日数回の水の交換を心がけましょう。容器も清潔に保つことが重要です。
  3. 個体差への配慮: 水の温度の好みは個体差もあるので、どのお水の温度だとよく飲むかなど試してみるのも良いでしょう。また特に猫に多い理由で、容器が気に入らないとお水を飲まなくなることあるため、複数の容器を用意するのもおすすめです。
  4. 健康監視:水を飲まないことはペットに良くないとお話しましたが、反対に「水を飲む量がどんどん増えている」というのも糖尿病や腎臓病などの病気の可能性もあります。飲水量の変化は健康状態のバロメーターでもあるため、日頃から観察することが大切です。

愛するペットとはできるだけ長く一緒に暮らしたいですよね。愛するペットの健康維持のために、毎日の水分補給を見直し、質の高い水環境を整えることで、より長く健康的な生活をサポートしていきましょう。

主な参考文献・出典
永原動物病院(獣医師監修)「愛犬や愛猫が水を飲まない!?正しい水分補給と注意すべき病気」
リアンアニマルクリニック(獣医師監修)「犬と猫の水分補給について|脱水を防ぐ!愛犬・愛猫の水分補給習慣」 
岩切裕布獣医師/ペット栄養管理士監修「愛犬・愛猫が水を飲まないときはどうしたらいい?適切な飲水量や水を飲ませる工夫を解説」
飲み水の温度 – ひだまり動物病院 | 吉祥寺 
東京猫医療センター院長監修「猫が水を飲まない!水の種類や食器を工夫して対策」 
共立製薬株式会社「【犬編】第1回:栄養素|ペットの食事学」